稼動準備が「稼動品質」を決める
【ページ構成】 ■ 稼動準備の体制確立
■ 移行・切替作業の計画と実施
■ 稼動準備の対象
■ 確かな「稼動判定」のために
■ 稼動に応じた組織変更
「目的・期待効果の実現」を確かなものにするためには移行計画と切替計画を軸にした稼動
準備の作業が不可欠です。パッケージなり情報システムは所詮道具であり、目的達成の手段
にすぎません。稼動準備の作業は道具を使いこなす環境と条件を整えることにあります。稼動
判定に不可欠な材料になります。
一般的には「システム」品質に目がいきがちですが、この「稼動準備」品質にも目を向けるべき
です。本番稼動時につまずく原因の一つは、 情報システムの移行・切替作業を含む稼動準備
作業にあります。故に、稼動判定はこの「稼動準備」と「システム品質」の両面から行うことが大
切です。不測事態を想定した コンティンジェンシー計画を作成しておくことも必要です。
稼動準備の体制確立
稼動準備は自社において経験の少ない作業です。そのため、どんな作業をどのように行うかなど
の不安材料があります。その不安を払拭するには関係者の前向きな協力が必要になり、関係者
の意見や要望が稼動準備作業を整理するための大切な情報になります。
パッケージ導入に関わる自社の影響範囲(部門・業務・社外)をしっかり押さえて、関係者を含めた
稼動準備の体制とスケジュールをしっかり創ることです。
1.稼動準備の体制
・ 稼動準備に必要な作業を洗出し、整理をする。
・ 作業を実行する人を選出し、責任者を決める。
・ 管理基準、業務運用ルール、作業の相関性、役割分担を決める。
・ 体制、スケジュール(レビュー・役員承認を含む)を決める。
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2.現状の仕事
・ 稼動準備担当者の現状の仕事のスケジュールと工数を把握する。
・ 稼動準備作業への投入工数とスケジュールを決める。
・ 本人と上司の了解を得る。(現状プラスの作業認識)
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3.経営者の理解・承認
・ 体制とスケジュールの承認を得る。
・ 稼動準備作業は、現状プラスの工数増であることを理解させる。
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4.全員への周知徹底
・ 経営者の承認事項を全員に徹底する。
(全員の協力なしには稼動準備の成功はありえない旨を含めて)
・ 周知徹底の中での、意見と要望には耳を傾ける。 |
移行・切替作業の計画と実施
現行システムとの移行処理及び新システムに必要なマスタなどの登録作業を含めた移行・切替
作業は一般的に大きなリスクを伴います。本番稼動の失敗なり延期の事例を見ると、多くはこの
移行・切替作業に原因があります。一過性の仕事で軽視しがちですが、非常に緻密な作業が要
求され移行・切替作業計画の作成が必要不可欠です。ユーザとベンダがお互いの知恵とスキル
を出し合って計画を作成し行動することです。
【参考】 ダウンロード資料<220 移行・切替作業の計画書(サンプル)>
● 作業の「見える化」←移行・切替作業の計画書
・ 作業進捗を誰でもが一目瞭然に確認できること。(壁などに貼りだして管理)
・ 中間と最終の作業完了時間を決めること。(トラブル発生の想定を前提)
・ ユーザとベンダの作業範囲と手順及び責任を明確にすること。(連携の重視)
・ 作業遅れの発見と作業の成果物チェックを重視して作業管理を行うこと。
● 作業タスクの洗出し・整理
・ 移行・切替作業当日の以前に準備できるタスク、当日のタスク、稼動後のタ
スクに分けて整理すること。
・ ユーザ独自、ベンダ独自、ユーザとベンダの共同の観点から必要タスクの洗
出しと整理を行うこと。
・ 洗出し整理したタスクに対して、順序と相関性をチェックし纏めること。必要に
応じてエンドユーザの検証を入れること。
● リハーサルの実施←完全なテスト実施を踏まえて
・ エンドユーザが認める満足な結果が得られるまで、テストを行うこと。
・ 作業タスクの成果物に対して、責任ある検証者を決めること。
・ 品質保証ができるテスト結果を踏まえて、関係者全員の参加を基に本番同
様のリハーサルを行うこと。
・ リハーサル実施には、新システムの動作確認・作業確認を含めること。
稼動準備の対象
稼動準備の対象は、社内・取引先・現行システムが基本になります。ただ、パッケージ導入の
機会を捉えて、原価管理・在庫管理のあり方・社内手続きなどを変えるケースもあります。その
場合はその管理内容を整理して、どこに影響を及ぼすかの検討が大事です。検討結果をこの稼
動準備作業に反映させます。また、コンティンジェンシー計画作成も含まれます。
1.社内
① インフラの整備・展開
・対象拠点のインフラ構成、ネットワーク設計
・展開体制、スケジュール
・インフラ導入時の作業/テスト/チェックの手引き
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② 業務・管理の変更点/改善点の徹底
・対象変更点/改善点のドキュメント化、新旧の比較
・関係部門/責任者の理解と了解
・経営者の理解と承認
・関係者への説明と理解
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③ 教育研修
・教育研修の対象者選定(階層別、業務別・・・・)
・教育カリキュラムの作成
(システム機能、業務/管理の変更と改善含む)
・実施スケジュール、体制、役割分担 |
④ 運用体制
・問合せ体制(操作、業務処理、管理内容・・・)
・問題管理(システムミス、改善要望、問題点対応・・・)
・ベンダとの役割分担
・掲示板/メールなどの活用 |
2.取引先
① 取引先内容の変更点の案内
・伝票/取引帳票の変更点明示と案内文書
・案内文書の送付、営業担当の説明実施
・実施スケジュール
② サービス向上の案内
・社内の了解を基にした案内文書
例:業務処理(締め時間、配送時間、発注Web・・)
情報活用(在庫照会、出荷案内、納期回答・・)
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3.現行システム
① 併行稼動
・併行稼動の目的、対象範囲
・新旧システムの検証内容と検証時期
・実施体制、スケジュール
② 移行処理
【参考】 ダウンロード資料<200 「移行処理」のシナリオ>
③ 切替処理
・対象データベースの選定、セットアップ
・インフラ/システムどのチェック体制とチェック内容
・切替計画(WBS・タイムスケジュール)
4.コンティンジェンシー計画
① 対象業務
・移行、切替作業
・最初の日次業務、月次業務、年次業務
・各種の締め処理、社内外とのデータ連携
② 不測事態発生と対策
・想定される事態の現象(システム品質、作業、運用)
・(対策) 現行システムの復帰、新システムの改善
取引先への連絡、社内への連絡
③ 体制
・不測事態(新システムの稼働可否)の判定者、判定時期
・連絡のルートと責任者、連絡内容
④ 現行システムの取り扱い
・復帰想定の準備と稼働確認(手順、検証、担当)
・再稼働の条件整理
⑤ その他
・不測事態を起こさない「事前防止策」の策定
・必要に応じた「被害対象の想定」
【参考】 ダウンロード資料<210 コンティンジェンシー計画(サンプル)>
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確かな「稼動判定」のために
パッケージ導入に必要な作業を積み重ねて、最後の作業が「稼動判定」になります。この作業の
判断は安定稼動の実現に大きな影響を与えますので、一つのミスも許されません。稼動安定を
保証する作業結果としての品質を見極めることです。「稼動準備」「移行処理・切替作業」「シス
テム」に関しての最終点検を行い、稼動条件を満たしているかの最終判断を行います。一つでも
不良なり不安があれば稼動の延期を決めるべきです。稼動後の混乱は目に見えています。
稼動に応じた組織変更
パッケージ導入の稼動により、一部組織変更なり人事異動を行うことを考慮するケースもあり
ます。情報システムの役割を発揮させるためには、その情報システムの維持管理と発展が
必要になります。このことを経営として明らかにします。その結果、情報システムを取扱う組織
の位置付けを変更することがあります。次のようなケースに該当する場合、組織変更・人事異
動に一考を要します。
① 事業活動における情報システムの比重が高く、今後も情報システムの
役割の強化と拡充を図っていく必要がある。
② 情報システムが他社との差別化・競争力に必要な武器になっている。
③ 今まで、情報システムの評価が低く社内で裏方として扱われたため、
業務効率化と情報活用の面で後れをとった。
④ 情報システムの担当者はいるが、組織的には曖昧になっている。
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