ベンダ選定の数社の事例から
パッケージ導入を成功させる第一の条件は、パッケージ商品(情報シス
テムの開発も含む)の稼働に責任を持つパートナーとしての最良ベンダの
確保にあります。では、どのようにすれば最良ベンダの選定が可能かを
数社の事例からその共通するポイントを纏めてみました。
つぎのような点に注視しました。
1.準備・RFI・RFP・詰め・決定の基本手順
2.必要な作業とドキュメント作成
3.選定作業における注意すべき点
RFI・RFP・詰めを含めた基本手順を軸に、自社の目的と条件を踏まえて
ベンダの見極めと選定の作業に取り組むことを期待します。
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準備から選定までの基本手順
自社にとって最良のベンダを選定する手順は基本的に5ステップです。複数パッケージの組合せ、事業
規模及びシステム機能の複雑性などにより選定期間は左右します。期間は3ヵ月から最長5ヵ月と見る
のが妥当です。また、RFP作成とともにその前後の作業ステップを重視することが大切です。各種の事
例からもこのことが言えます。 そこに5ステップの基本手順で行う意味があります。
① 準備(期間:1ヵ月~2ヵ月)
・ベンダ選定のチーム編成、パッケージ導入の目的と範囲
・基本手順、日程、対象ベンダ、予算の決め
・現行システム、課題解決、業務改善の纏め
② RFI(期間:2週間~3週間) RFI=Request For Information
・第一次ベンダ選定の実施、対象ベンダ(5社~8社)
・自社の基本要件への満足度とベンダ対応力の確認
・選定の結果、3社程度 (対象ベンダ3社以下、RFIは不要)
③ RFP(期間:1ヵ月~1.5ヵ月) RFP=Request For Proposal
・第二次ベンダ選定の実施、対象ベンダ(3社程度)
・自社のRFPへの回答とベンダ提案の情報入手
・パッケージデモの実施、プレゼン、ベンダ提案の整理
④ 詰め(期間:2週間~1ヵ月)
・対象ベンダとの個別打合せによる細部の詰めと評価
・PMと主SEの力量及び姿勢の評価
⑤ 決定
・ベンダ1社の決定、社内の合意と承認
・ベンダへの決定通知
(参考) 「信頼できるベンダ評価と選択」ページ
【参考】 ダウンロード資料<110 ベンダ選択の評価基準>
必要な作業とドキュメント作成
基本手順に沿って、必要な作業とそれに関わるドキュメント作成を整理してベンダ選定に取り組む
ことです。一つ一つの作業は先の作業ステップを見据えて行うことも大切です。ベンダへの的確な
情報提示(=ドキュメント)が最良のベンダ選択に繋がります。
・「主なドキュメント」の太字をクリックすると事例ドキュメントが表示されます。
基本手順 |
作業 |
主なドキュメント |
① 準備 |
・「パッケージ導入」プロジェクトの発足
・新システムの対象、機能、問題点、予算のまとめ
・ベンダの候補、選定スケジュールの決め
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・作業計画表
・新システムの方針と要件
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② RFI |
・ベンダからの情報提示/入手の整理
・要求するパッケージ保有のシステム機能の整理
・RFIの依頼、回答への評価とベンダ選定 |
・ベンダ選定のご案内
・RFI
・RFI評価表 |
③ RFP |
・システム機能、運用要件、セキュリティの整理
・現行システム、問題解決策の整理
・移行対象データベース、切替処理などの整理
・スケジュール(デモ・プレゼン・質問)の決め
・RFPの依頼、ベンダの評価(各社の比較) |
・RFP
・ベンダ評価表
・提案回答用紙
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④ 詰め |
・ベンダの選定(2社程度)
・漏れ、未確認及びベンダ要求の個別打合せ
・ベンダとの個別打合せ、ベンダの最終評価 |
・ベンダ評価表
・ベンダ評価の総評表
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⑤ 決定 |
・ベンダの最終決定(1社)
・社内の合意と承認 |
・ベンダ決定の報告書
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*1 「②RFI」にて、最初のベンダ集合時にベンダの最終決定までのイベントとスケジュールを案内
することは大事な情報開示になります。
*2 「③ RFP」の提案回答用紙を指定することにより、ベンダ回答の統一性がとれベンダ間の整理
と比較がやり易くなります。
*3 「④ 詰め」においては、担当するPM・主SEの理解度・スキル・姿勢などの力量把握のためにベ
ンダ別面接を行うことです。その結果を踏まえて、最終ベンダの決定を行うことです。
【参考】 ダウンロード資料<070 「プロジェクトマネジャーの評価方法」>
*4 「④ 詰め ⑤ 決定」の作業で、ベンダ評価の関係者がベンダ評価表を基に率直な意見交換と
議論をすることが必要です。評価の大事なポイントが整理されます。
選定作業における注意すべき点
パートナーとしての最良ベンダを選ぶ作業は、自社として注意深く堅実に行うことが必要です。その
作業の仕方なり提示するドキュメントはベンダに対して自社の能力なり姿勢を正直に示します。
ベンダはそれらのことも勘案してコンペに臨んできます。次のことを自社として胆に据えて、ベンダ選
定の作業を進めることです。
「準備と時間」
・ 事前に、各作業ステップのベンダ向けと社内向けのドキュメント作成・情報通知を行
って各作業ステップの作業に入る。
・ 特に「準備」ステップは業務改善、問題解決及び期待効果との関連を含めてパッケ
ージ導入の意義と位置付けを明確にする。
・ あせらずじっくりと一つ一つの作業ステップの消化を行う。必要な時間は確保する。
自社のかける時間と熱意は質の高いベンダ選定作業に結びつく。
・ 特に「RFP」「詰め」ステップは可能な限りベンダとの接触時間をとり、ベンダの見極
めを確実に行い評価情報の曖昧さを残さない。
「中立と誠意」
・ 付き合いのあるベンダを含めて選定対象のベンダには中立的立場に徹する。
・ ベンダへの情報提供と自社からの回答を公平に行い、ベンダとの距離と姿勢を平等
に保つ。
・ ベンダの要望、疑問及び意見には大小にかかわらず誠意をもって対応する。
・ ベンダは「中立なり誠意」に関しては敏感であり、この見地と行動が自社に欠けてい
ればベンダ選定作業に支障を来たし、最良ベンダの選択を困難にする可能性がある。
「事実と評価」
・ 会話なり口頭でなく、5W1Hを有するドキュメントという残る媒体でベンダと向き合う。
・ プレゼンや打合せのときにベンダに対する「質問」の仕方を重視し、事実となる情報を
得るための努力をする。評価を行う際、曖昧な情報は害があって益なし。
【参考】 ダウンロード資料<144 「質問とインタビュー」の要領>
・ ドキュメントという事実に加えて、担当するPMと主SEの発言内容の信頼性と力量で
評価を行う。「情に棹させば流される」ではないですが、感情が入ると正しい評価と判断
を狂わすことになるのでクールに行なう。 また、ベンダの営業主体のプレゼン・資料説
明・質疑は要注意です。ベンダ力量の事実と言えない面がある。
数社事例の結果は!
・ 「基本手順・作業とドキュメント・注意すべき点」に留意し、自社の弱みを知り改善を施し
たユーザはベンダとともにパッケージ導入の目的を達成し成果を速やかに出しました。
・ これらの点から外れたユーザはパッケージ導入作業で苦労を余儀なくされました。また、
パッケージ導入の目的と期待効果に対する達成がダウンしたユーザもありました。
■ ユーザとしてのプロジェクトマネジメントのあり方を知って実行することは、目的
達成の必要条件です。ユーザのためのプロジェクトマネジメントに関心のある方
は次ページを!
(参考) 「ユーザのためのプロジェクトマネジメント」ページ
■ パッケージ導入(システム構築)と業務改善は表裏一体です。業務改善に関心
のある方は次ページを!
(参考) 「業務改善への情報システムの活用」ページ
■ パッケージ導入において事業・管理・業務における問題の整理及び解決策作成
に関心のある方は次ページを!
(参考) 「課題解決の簡単な進め方」ページ
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る方、また、欲しい情報のある方は 「お問い合わせ」ページにてご連絡を頂
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