中堅企業・中小企業における価値あるパッケージ導入の手引き

 

 
 
 
 

  統括責任者の持っている重要な役割

 中堅・中小企業の情報システムの再構築を含むパッケージ導入・クラウド導入を成功に導くための条件の一つは、経営トップからの指示を受けた統括責任者(プロジェクトオーナー)の果たす役割にあります。目的達成に責任を負うプロジェクトの有効な働きとメンバーの自主的で実りある活動基盤を作り上げることです。また、人材育成の観点からのメンバー選出です。ここに、プロジェクト活動で多くの成功事例に共通して見られる統括責任者のあるべき姿があります。

 プロジェクトの目的達成に対する統括責任者のビジョンの明示、プロジェクト活動への見方・心構え・問題解決の仕方及びプロジェクトメンバーからの信頼感があって、統括責任者(プロジェクトオーナー)の役割を果たすことができます。
 また、事業基盤を損なうことがないようにするために危機管理の視点からも検討することです。自社の信用、事業存続、取引の機会損失及び情報漏洩などのリスクに対する危機管理のあり方です。

 

 統括責任者(プロジェクトオーナー)の定義

  経営者が決めたパッケージ導入(又はクラウド導入)の目的達成に実質的な責任を持っている
のが
統括責任者(プロジェクトオーナー)です。プロジェクトの目的達成に必要なプロジェクト
メンバー選出と構成、予算管理、スケジュール、納期、ベンダ選択及びリスク管理の確認と承認
を行います。また、プロジェクト進捗に応じ た問題管理とその解決へ大所高所からの指示と判断
も行います。これらのことを行うのが統括責任者の仕事です。
 プロジェクトの規模と難易度により、統括責任者の位置付けはプロジェクト体制との関係で「
独立型」と「兼務型」があります。この選択は次のような点を考慮して決めます。
  1.独立型
     ・ プロジェクト予算が5千万円以上(目安)である。
     ・ プロジェクト対象が複数部門の業務になり、メンバーも複数部門から構成される。
     ・ 業務改善、管理基準の改定、事業強化などが経営から要求され、システム化以前
       の作業として解決策の対応も含まれる。
  2.兼務型 (統括責任者とプロジェクトマネジャーの兼務) 
     ・ プロジェクト予算が5千万円未満(目安)である。
     ・ プロジェクト関係部門が1か2部門であり、メンバーも少数で構成される。
     ・ システム化以前の業務改善なり管理基準の改定は明確になっている。
             

 統括責任者に必要な姿勢と見方、心構え

 まず必要なことは全社的視点から全てを「見る、聞く、情報を得る、指示をする、判断をする」
に尽きます。このことがプロジェクトメンバーや関係者からの信頼を得ることになります。その
信頼を確かなものにするためには次のことが大切です。また、情報システムの特性を知っておく
ことも必要です。
  1.姿勢と見方
     ● 「組織、人」
        ・ 組織と人を公平に扱い、作業状況とその改善の成果物を冷静に見る。
        ・ 組織間の連携プレーと情報共有、及び作業連携と決定事項の確認をする。
        ・ 組織又は組織間の問題把握とその解決と改善の方向性を示す。
        ・ メンバーと関係者の個性を把握し、その良さを活かす環境を整える。
     ● 「事実確認」
        ・ ドキュメントなり作成した資料に基づいて、報告・問題点・提案を受ける。
        ・ 根拠の無い又は憶測なり推測を交えた意見などはまともに取り扱わない。
        ・ データと資料に基づいて、メンバーからの提案・変更・判断を吟味する。
        ・ 問題発生の場合は、その当事者(社内、ベンダ)と原因と現象を確認する。
     ● 「支援、判断」
        ・ 組織と人の作業の問題に対し事実確認に基づいて、適切な支援を行う。
        ・ プロジェクト進捗の遅れなり障害に対して、クールな判断をする。
        ・ 稼働という最終ゴールからの逆算した見方から、目的達成の可否を判断し
          必要があれば適切な手を打つ。

 

 

 

 

 

 

   2.心構え
     当たり前な言葉ですが、改めてつぎのようなことに留意することを薦めます。
        ・ 情報システムに関して、「良く分からない」とは決して言わない。
        ・ パッケージ導入作業は日常行っている「業務改善」活動と同じように考える。
        ・ 「部下まかせ」にせず、必ず成功させる意志を持ち自分の意見なり考えを公
                            言する。
        ・ 「パッケージ・クラウドに合わせる」は最後の手段であり、目的達成が第一
                            義である。
        ・ 待ちでなく、メンバーに声をかけ明るくオープンな雰囲気を創る。
        ・ 問題発生がゼロということはあり得ないです。問題が小さいうちに解決する
                            ことです。
  3.情報システムの特性
     パッケージ(クラウド)導入なり情報システムの再構築にしても、「情報システム化」と
     いう作業とその成果物の特性を知っておくことは、「姿勢と見方」「心構え」との関係
     において必要不可欠と考えます。
        ・ 数字のみでは「システム商品」を評価できない面がある。
        ・ システム化工程の成果物は、人による「確認」の連鎖で成り立っている。
        ・ 工業製品と異なり、「システム商品」は機械装置による検査が出来ない。
        ・ 「システム商品」の評価は形でなく、人の判断・見極め・納得に依存する。
        ・ システム全体の仕組みと個々のシステム処理が有機的な連携をして「システム
          商品」と言える。
  4.危機管理への対応
       情報システムは事業基盤の役割を担っています。この事業基盤を損なうリスクに対して
     は普段から危機管理の対策を講じておくことが必要です。
        ・ ハードウェア、組織、経営方針・ルールなどの事業基盤の根幹です。
           (災害、設備、防犯、システム運用、データ管理)
        ・ 情報システムを稼働し運営していくために必要なソフトウェア、人、ルール・
          管理基準などの情報セキュリティ関連です。
           (データ処理、ウィルス、情報アクセス、情報漏洩、私的流用)
               
【参考】ダウンロード資料<120 危機管理への対策> 

  統括責任者のやるべきこと  

  統括責任者がプロジェクト活動の開始前に、他人任せでなく主体的にやるべきことは次の3点
です。大海原を航海するために必要な目的地と羅針盤、航路及び乗組員の決定です。これらのう
ち一つでも曖昧であったり不備があればプロジェクト活動の成果は期待できませんし、難破する
可能性があります。ここに統括責任者の「責任」があります。また、ユーザとしてプロジェクト
活動を成功に導くために必要な「ユーザとしてやるべきこと」の主な作業と押えどころを知って
おくことを薦めます。

  1.目的と期待効果の設定
    ① 「事業、経営管理」「業務処理、管理基準」「顧客サービス」
      などから具体的に目的を決める。                  
          ② 期待効果は、目的達成した後の「数値」設定を含める。 
 

   2.基本手順の決定 
          ① 目的達成の障害になる問題、課題の整理を行う。
      ② その内容により、「問題解決策」作業を行うか否かを決める。
    ③ 問題解決作業が自社独力かコンサル採用かを決める。
   3.プロジェクトメンバーの選出
          ① 対象システムによる組織バランスと人材育成を考慮する。
          ② メンバーの役割分担を文書化し、経営の承認をえる。
    ③ メンバー活動の業績評価方法を決め、関係者へ徹底する。

                                         (参考) 「ユーザとしてやるべきこと」ページ 
   
  プロジェクト活動の基盤になる上記項目を決めましたら、次にプロジェクト活動の「初期」「実
行」「稼働準備」ステップに応じたチェックポイントがあります。これらに関してもプロジェクト
活動の自主性を考慮しながら、責任ある関与と指導が必要です。 

  1.「初期」ステップ
     ① パッケージ(クラウド)商品とベンダの選択
       
・ 選択行為の中立性を維持し、目的達成のための選択基準の明確化。
       ・ パッケージ商品の間違いない選択とベンダのPMと主SEの力量把握。
                              
(参考) 「ベンダ選定の事例」ページ
     ② 予算の扱い
       
・ 最終予算の決定とベンダ提示の概算見積との差異とその理由の把握。
       ・ ベンダ提示の最終確定額が膨れる可能性を考慮。
     ③ 社内への周知徹底
       
・ プロジェクト活動の開始と活動中の情報提供ルールを社内全員に通知。
       ・ 情報提供、資料作成及びテスト参加など協力を必要とする関係者への依頼。

  2.「実行」ステップ
     ① 実行計画書の確認
       
・ 差異発生の発見と問題把握の仕方及び対策のルールと手順の明確化。
       ・ 作業工程別の成果物レビューの参加者、方法、合意基準の決定。
     ② 要件定義成果物の重要性
       
・ プロジェクトメンバーと社内関係者による理解、確認及び納得の重視。
       ・ 画面(項目、遷移、操作性、画面間・・)など具体的成果物のベンダへの要求。
               ③ 品質第一の追求
       
・ 各作業の成果物はドキュメントなりシステム化(画面・帳票・・)のみで品質
                         評価。
       ・ システムを利用する人の意見尊重及び必要な意見の成果物への反映の実施。
     ④ テスト作業への協力
       
・ テスト作業参加者の作業時間とスケジュールの確保及び参加者の納得。

  3.「稼働準備」ステップ
     ① 必要作業の整理
       
・ 移行マスタとデータ、事前登録マスタとデータ及び業務ルールの改善などに応じ
         た作業の洗い出しと相関性及びスケジュールと担当の明確化。
       ・ リスクのある作業とその対策の作業実施。
     ② コンティンジェンシー(緊急時対応)計画の作成 
       
・ 本番稼働の切替え作業での不足事態の発生への対策の明確化。
       ・ 現行システムが復活する可能性への対応。
                       
【参考】ダウンロード資料<210 コンティンジェンシー計画(サンプル)>

  ● 「ユーザのためのパッケージ導入」セミナーのご案内

 
 セミナーの目的
   ・ 受講結果、自社に戻り独力で必要な作業を消化できる。
   ・ 社内手続き、社内協力、資料作成及び問題解決を容易にする。
   ・ パッケージ選定、システム品質及び稼動に必要な知識が理解できる。
 セミナーの内容
  
① 導入準備に必要な作業内容と実践ポイント
   ② 最良なパッケージ・ベンダ選定のための実施方法
   ③ 価値ある要件定義書を作成する実践ポイント
   ④ 安定稼動に必要なユーザテストと社内準備 
  開催の要領
   
「ユーザのためのパッケージ導入 徹底解説」セミナー
 

リーダシップはビジョンと戦略を描き、これらを実現させるために人々を結集し、彼ら彼女ら
をエンパワーメントするなど、さまざまな障害を乗り越えて変革を実現させる原動力であり、
トップマネジメントのみならず、あらゆる階層のマネジャーに求められる能力であります。
リーダシップは変革を必然的に生むものであり、それが最大の効用なのです。
        (ジョン P.コッタ- 「マネジャー研修とリーダ-教育は異なる」)
  * エンパワーメント=与えられた目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する力を与えること

    ■  ユーザとしてのプロジェクトマネジメントのあり方を知って実行することは、目的
    達成の必要条件です。ユーザのためのプロジェクトマネジメントに関心のある方
    は次ページを!
         
(参考) 「ユーザのためのプロジェクトマネジメント」ページ 

   ■ パッケージ導入(システム構築)と業務改善は表裏一体です。業務改善に関心
     のある
方は次ページを!
                         
(参考) 「業務改善への情報システムの活用」ページ 
   ■ プロジェクト管理において必要不可欠な問題の発見、整理及び解決策作成に
     関心のある方は次ページを!
         
(参考) 「課題解決の簡単な進め方」ページ

 
 パッケージ導入・情報システムの再構築に関しての疑問・不安・質
     問のある方、また、欲しい情報のある方は
           
「お問い合わせ」ペー ジ     
                    にてご連絡を頂ければ対応させて頂きます。

                 

 

ページ先頭へ

 
 
ホームページ作成方法