失敗事例
失敗とは必ずしも、パッケージ導入案件(ERPパッケージ導入含む)の完全な失敗としてでなく
「目的達成・期待効果の実現」の未達、予算オーバー及びシステムの低品質という結果になっ
た意味で使っています。完全な失敗はプロジェクト活動が途中でとん挫しています。
失敗事例から見えてくる失敗の要因はベンダ側のプロジェクトマネジメント、プロジェクトマネジ
ャ、体制及びコンサルティングにあります。また、失敗という結果を招いた問題点なり弱点を
早期に問題発見できないユーザ側の甘さなり他力本願にもあります。
K社 (メーカ代理店、小売) - コンサルティングの失敗 -
1.目的と期待効果
(目的) ・ 事業拡大に伴なう業務量の吸収と商品センターの機能充実と在庫金額の圧縮
・ 全国支店、営業所の営業状況の把握と本社管理の充実
・ 限界にきている現行システムの早期切替
(期待効果⇒未達成)
●一部システムが稼動できず、現状の仕事スタイルの現状維持
●稼動時期を守れず(2度延期)、予算枠をオーバー
●稼動後のシステム品質(カスタマイズ)が安定せず、工数負荷の増
2.対象範囲
・ 受注出荷売上、発注入荷仕入、生産依頼(内示・確定)、店頭販売、在庫管理
売掛金管理、買掛金管理、会計連携、経営管理、輸入処理
3. 基本手順

・ 「コンサルティングフェーズ」の結果で、パッケージ・ベンダの選択に入る。
・ 「コンサルティングフェーズ」と「要件定義フェーズ」のベンダは異なる。
・ コンサルティングの成果物が要件定義作業に有効に働かない面が発生する。
4. 「失敗」の原因と教訓
・ コンサルティング成果物に対する目的と期待効果の側面からの点検と検証が
弱く、システム機能としての問題解決策が中途半端になる。コンサルティング
成果物が経営者向けの抽象的な表現が多く、実務面での具体性が弱い内容
であった。システムの要件定義作業がてこずった。
・ PMと主担当SEの力量が弱く、K社の業務処理・管理内容に対する理解と咀
嚼ができず、作業が前に進まなかった。ここに失敗の根本原因がある。
・ ベンダが会社組織としてのレビュー・チェック機能が働かず、手遅れになり無駄
な工数・コストを浪費する。
・ K社の姿勢がコンサルティング頼みになり、基本手順と導入計画の具体性と
確実性に欠け、問題発見が遅れる。
参考) 基本手順とパターン選択ページの「パートナーの選び方」
S社 (商社) - ベンダ選択の失敗/SEの力量不足 -
1.目的
・ 営業活動と営業事務の効率的な連携を図り、営業活動の支援を強化
・ 業務処理の標準化を高め、経営管理・マネジメントがし易い環境の整備
・ 情報システムの刷新と情報活用の基盤構築
2.システム再構築の背景
・ 現行システムに信頼感がもてない。(資料間の合計数字が合わないケースあり)
・ PC処理を含めて、2重入力があり無駄な工数を使っている。
・ マスタ/コードに限界があり、新たな取引への対応が困難になっている。
3.対象範囲
・ 販売管理(受注出荷売上、発注入荷仕入、売掛金管理、買掛金管理、在庫管理)
・ 営業活動支援、営業活動評価、経営管理、情報活用、経費管理
・ 財務会計、手形管理、固定資産管理
4.基本手順とベンダ条件

「C社」を選択して、要件定義(C社ベンダ=要求定義)作業に入る。
5.要件定義作業の結果
・ C社より要件定義作業の成果物を踏まえて、再見積金額「約8,000万円」の提示を受ける。
・ 要件定義の成果物が貧弱であり、次工程作業への連携ができない。目的達成を実現する
システム要件に程遠い内容であり、打合せ結果のまとめに過ぎない代物(議事録)である。
・ S社のプロジェクト責任者はこの再見積金額に不信を抱くとともに、システム稼働に不安を
持ちベンダ不信になる。
・ この要件定義作業の成果物に基づいてのシステムの設計と稼動の品質は保証の限りでは
ない。「期待効果」の効果は到底期待できない。
6.「失敗」の原因と教訓
・ S社のプロジェクト体制が弱い。プロジェクト責任者が情報システムに関しての知識と経験に
欠けており、リーダシップが発揮できない。プロジェクトメンバーも管理部門で構成され、営業
部門からのメンバーは不在である。
・ ベンダSEの力量不足のため、「要件定義」作業が何であるかを知らない結果になっている。
成果物が対象範囲の業務知識不足/論理性欠如/目的達成への認識不足により、「打合せ」
の議事録と化している。
・ 失敗の根本原因は費用面のみを重視しての安易なベンダ選択による判断ミスに帰着する。
システムの再構築を目的化しているところにも問題発生の原因の一つがある。
参考) パッケージ・ベンダ選択の簡易版ページの「安物買いの銭失い」
参考) 「信頼できるベンダ評価と選択」ページ
● 「ユーザのためのパッケージ導入」セミナーのご案内
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セミナーの目的
・ 受講結果、自社に戻り独力で必要な作業を消化できる。
・ 社内手続き、社内協力、資料作成及び問題解決を容易にする。
・ パッケージ選定、システム品質及び稼動に必要な知識が理解できる。
セミナーの内容
① 導入準備に必要な作業内容と実践ポイント
② 最良なパッケージ・ベンダ選定のための実施方法
③ 価値ある要件定義書を作成する実践ポイント
④ 安定稼動に必要なユーザテストと社内準備
開催の要領
「ユーザのためのパッケージ導入 徹底解説」セミナー
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